【Vol6】Marketing Media Lab

ビジネスやマーケティングに役立つ記事やノウハウをお届けするニュースレター「Marketing Media Lab」第6号です。
エルモ@広告屋 2021.03.14
読者限定

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Marketing Media Lab 
Vol.6
( 2021年3月14日発行 )
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1. Weekly Marketing News

Weekly Marketing Newsでは、今週1週間の注目ニュースや記事を取り上げます。このコーナーでは、直接的なマーケティング記事だけではなく、いずれあなたのマーケティング活動に役立つ情報・視点を(独断と偏見を交え)お届けます。俯瞰的なモノの見方を身につけ、長期で役立つマーケティングOSを身に着けていただければと思います。
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日本のインターネット広告費の詳細内訳が発表!

先週、2020年「日本の広告費」が発表されたことを紹介しました。今週はさらに、インターネット広告費の内訳が発表されました。

インターネット広告費は、テレビ広告を超えてナンバーワンになった以上、ネット広告費でひとくくりにするのはナンセンスで、その内訳も知っておくべき。要は、「どこにお金がたくさん流れているのか?」くらいは知っておこうねって話です。

その内訳がこちら。

ポイントは2つあると思っていまして、

①動画広告が伸びてきている
②いまだに検索連動型広告が王者である

①動画広告市場について
インターネットの動画マーケットが大きくなり、動画広告に参入する企業が増えてきました。広告業界の中の人として言わせてもらうと、数年前までは「Youtubeに広告を出すなんて......」という雰囲気もありましたが、今では「ファーストチョイスはYoutubeだよね」と言われるくらい広告主にも心理変化が起きており、Youtubeが動画広告市場のポジションを築き始めています。

それくらいYoutubeや他SNSプラットフォームは市民権を得ましたし、これから動画広告市場が伸びることは間違いないと思います。

②次が検索連動型広告について。
検索連動型広告は、SNSやYoutubeが伸びてきても、まだまだ王者であり続けると思っています。というのも、検索連動型広告だけ、広告としての性質が全く異なるからです。

簡単にいうと、
■普通の広告コミュニケーション
「ちょっと、すみません。よかったら、この商品いかがですか?!(突然)」

■検索連動型広告
「あ、美白に悩んでるんですか?それなら良いモノがありますよ。」

といった感じで、ユーザー自らがお悩みを自己開示してくれていて、検索連動型広告の構造だけ、「後出しの広告コミュニケーション」になっているんですね。

相手の悩みがわかれば、ぶつけるコミュニケーションも決まってくるので、当然広告効率も良くなります。

この検索連動型広告にかなう広告は、たぶんソーシャルメディアやYoutubeからも当分の間出てきません。むしろ、今のSNSは直販(ユーザー同士が課金し合う)の方向に向かっているので、まだまだ検索連動型広告が王者であり続けるんじゃないか?と個人的には考えています。

今回は、ネット広告費内訳の一部を取り上げただけにすぎないので、ぜひご自分でその内訳をチェックしてみてください。

動画CMの本流はまだまだテレビではあるが.....

「動画広告の主導権をテレビとネットのどちらが握るのか?」を議論したコラムも非常に面白いです。

先程、ネット動画広告が伸びると言いましたが、ネット動画vsテレビ動画広告でいうと、実はまだ何十倍もの差があります。(もちろんテレビが勝っている。)

 2019年にインターネット広告費がテレビ広告費を超えましたが、その中身はまだまだリスティング広告やバナー広告などです。CMという情報量や役割も違う広告市場では、いまだテレビCMが圧倒しているわけですが、今後もこの市場の軸が放送なのか、配信なのか。はたまた、テレビ局が放送を軸に配信によるものにも展開できるのか、グーグルやフェースブックの巨大プラットフォーマに軸が移るのかが問題なのです。 テレビ局にとって体制維持を選択していると主体を奪われる「取返しのつかないこと」になるやもしれません。

ネット動画はNetflixやDisneyのように有料課金コンテンツ市場が伸びていることもあり、単純にデジタルの世界で動画広告が伸びると断言できるわけでもないところがまた難しいところ。

テレビのような放送か?それともネット配信か?
・(さらに)ネット配信では動画広告か?有料課金で広告が消えるのか?

と、コンテンツ消費のネット化が進むにつれて、ニーズ(とそれに伴う供給)が枝分かれしていくんじゃないかなと個人的には捉えています。

こういった背景があるので、ネットの動画「広告」市場に関しては、テレビほど大きくならない気がしています。

コミュニティ内の空気を統一する

今週、一番面白かったニュース記事がこちら。J2クラブ水戸ホーリーホック社長のインタビュー記事です。

入場者数は減ったが、スタジアムの雰囲気が変わった
「応援」とは「ホーリーホックにお金を使うこと」だと理解してもらわなければいけません。だから真っ先に戦略的でない無料招待チケットの配布をやめました。

そうすると、入場者数が減ってしまいますよね。

実際に減りました。そのかわりスタジアムの雰囲気が変わりました。無料招待チケットを配っていた時期は、試合に飽きた子どもたちが通路を走り回ったり、ゲームで遊んだりしていました。それが現在、有料入場者の割合が平均で8割を超すようになり、お客さんが試合に集中し、選手のプレーに注目して勝敗に一喜一憂するようになりました。

水戸ホーリーホックは、これまで続けていた「無料招待チケット」の配布をやめて、「観客人数は少なくてもいいからお金を払ってスタジアムに来ていただく」戦略に変えたらしいんですね。

「無料招待チケット」でスタジアムを埋めるのは、まずサッカーを知ってもらうきっかけになりそうですが、実は悪手にもなり得ます。というのも、「1回スタジアムに行ってみる→周囲も無料客ばかりで空気がよくない→『もういいや』と2回目のチャンスを失う」という悪循環が生まれる可能性があるからです。

この話はマーケティングでも同じですね。変に無料オファーで大量集客しても、その後のアフターフォローが下手くそだと、ブランドの信頼を失い、結果的に見込み顧客を大量に失うことになります。

さらに、スポーツやサロンのようなコミュニティビジネスは、「場の雰囲気」も一種のプロダクトです。誰を集客するか?(=誰を集めないか)がより重要になると、この記事を読み痛感しました

無料集客はリードを獲得する良い手段なんですが、商材や状況によっては、悪手にもなり得ると覚えておきましょう。

NFT(ノンファンジブルトークン)に価値はあるのか?

NFT(ノンファンジブルトークン)がここ最近注目されています。

ノンファンジブルとは「代替不可能」という意味で、ブロックチェーンの技術を使って、デジタル空間上にあるモノにも希少性を持たせようという取り組みです。

NFTを理解するには、これまでのデジタルについて考えると分かりやすいかもしれません。

デジタル(ネット)の特性を端的にいうと以下の2つです。
・コピーが簡単
・拡張可能性が高い

ネットでは、価値あるモノを生み出せたら、すぐに広がっていきます。たとえば、面白い漫画をSNSにあげるとたった数日のうちに有名漫画家のポジションにつくなんてことがありえるのがネットの世界です。「100日後に死ぬワニ」もそうでしたね。

ただ、ここでネット作品特有の問題が生じます。コピーがあまりにも容易で、オリジナルとコピー作品に違いがない(ように見える)ので、デジタル作品は1点モノとしての価値がつきにくいんです

有形物の世界ですと、オリジナルのモナリザ作品とコピー品では、価格に天と地ほどの差があります。しかし、デジタル作品にはそれがない。これが、デジタル作品をアート視点で見た時の問題点です。

前置きが長くなりました。このデジタル特有の課題を、デジタル作品に『所有権』を与えることで解決しようという取り組みがNFTです

いまtwitter創業者のジャックドーシーの初回ツイートの所有権には、2億円以上の価値がついています。「所有権を有していなくても、誰もが自由に見ることができるのに」です。笑

つまり、物理的に違いはないものの、「ある特定のデジタル作品を私が所有している」という概念に対して価値が生まれていることになります。

あなたはこのデジタル作品の所有権にお金を払いたいと思いますか?笑

はじめにNFT関連のニュースを見た時、私もあなたと同じように「こんな虚構概念にお金を払うようになるなんておかしい・・・」と感じました。

ただ、少し考えてみると、マーケットというのは、「売りたい」-「欲しい(買いたい)」が一対でも成り立てば成立するモノです。

たとえば、オリジナルモナリザ作品を世界で欲している人は世界人口の0.0001%くらいでしょうが、それでも今モナリザの価値は800億円くらいあります。

「需要と供給の関係」というと、「量」にばかり目が行きがちですが、一点モノのマーケットに量はそれほど関係なく、たった一人でも高値をつけて求める人がいれば成り立ちます。

つまり、自分の価値観としては全く受け入れきれないモノでも、需要がいくばくかあれば、マーケットが成立する。それがアート市場なんですね。

NFTというブロックチェーン技術を使った概念は、デジタル作品にアート作品としての価値を持たせようという取り組みそのものなので、これから有名人や著名アーティストのデジタル作品が売買されるようになるはずです。そして一時の流行りではなく、ネットでもアートを手に入れることができるという意味で、NFTはデジタルアートのスタンダードになるのではないか?と個人的には考えています。

これまで無価値だったものにプライスがつくこと自体は、経済のパイが増えること意味するので、とてもポジティブな話だと捉えています

「こんなモノに高値がつくなんて意味がわからん!羨ましい!」と直感的に感じてしまうのは仕方ないんですが、これまでの価値観の延長線上でモノゴトを判断しない癖をつけておきたいものです。

”インサイトの筋の良し悪し”を分かつ経験格差を考える

マーケティング支援会社インサイトフォースを経営する山口義宏さんがインサイトについて語った超良noteです。

(※私の解釈がインプットされる前に、まずは記事を読んでいただきたい)

とくに取り上げたい箇所がこちら。

顧客心理もブランド価値も、俯瞰してしまえば微差の違いであって、その微差を的確に短時間で理解し、定義し、ビジネスに活かすには、
1:微差の違いに気づく力
2:微差の違いを言語化する力

この2つはマーケターのOS的な能力としてあったほうが絶対に良い。けど、けっこう難しい。
〜中略〜
総括すると、インサイト理解の入口で重要な、人とブランドの相対的な微差に気づく重要な鍵は、「多様性ある人とのふれあい理解」と「こだわって関与の高い消費経験の蓄積量」の2つで、これが形式知の知識では代替が難しい、マーケターの成功に重要な基盤要素だと思う。

顧客を動かすインサイトは、「微差の違いに気付く力」とそれを言語化する力に由来するって話ですね。

これは本当に納得しかありません。とくに「言語化する能力」はある程度努力で補えますが、「ゼロイチで微差にきづく力」に関しては、マーケティング業界のなかでもインサイト理解力を伸ばすノウハウはまだまだ体系化されていません。

インサイト発掘は、極めて属人性が高く、同じ組織に仕事を依頼しても、3のアウトプットが出てくることもあれば、120のアウトプットが出てくることもある。というのが、まだまだ実情だと思います。

ちなみに、「微差に気づく力」を高めるために、多様な経験とこだわり消費を上げていますが、実は3つ目の切り口もあると思っていまして、そちらは後ほど取り上げます。

iPhone 12 miniの売れ行きがシリーズ最悪

iPhone12 miniのセールスポイントは、「これまでの高機能が小さなサイズでも!」だったわけですが、どうやらそのニーズはなかったようです。

・「iPhone SEのサイズ感が好きだった!」
・「最近は画面が巨大化しすぎてていていやだ!」

と言う声をよく見聞きしていましたが、どうやらそれは一部の声、またはユーザの口だけ発言であって、実際の消費行動は真逆の方向に向かっていました。

その事実を表す結果が出ていまして、それがこちらです。

この2年で、6インチ以上のスマホがシェア9割近くまで迫っています。

個人的に、この傾向は必然だと思っています。

ディスプレイが大きいと、一つの画面に載る情報量が最大化されますし、動画情報なら、人の表情や映像の細部がハッキリ見えるからです。

今は、テレビ&PC→スマホに情報インプットのツールが移行していて、動画もテキストも全てスマホで完結するようになってきています。画面の巨大化はもはや不可逆変化で、サイズを小さくしても売れる時代は終わったように思えます。

iPhoneとiPadが合体する時がやってくるかもしれませんね・・・・。

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2. マーケティングの引き出し

マーケティングに役立つ知識や視点、ノウハウをお届けするコーナーです。
知っていたらどこかで役に立つ、折に触れて思い出したい知識をお送りいたします。
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今回は、「行動経済学ってマーケティングに役立つの?」って話をしたいと思います。

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