【Vol52】やっぱりジェフ・ベゾスは只者じゃねぇ
今日は、普段のスタイルと異なり、一冊の本を紹介する形でニュースレターをお届けします。
最近ジェフベゾスの言葉を綴った「Invent & Wander」を読みまして、これが金言の連続。
ちなみに「ジェフ・ベゾス自らの言葉による初めての書籍!」とありますが、実際には、上場後にAmazonが株主に向けて書かれたレターをまとめたものです。
調べれば英文がネットに転がっているはずですが、1997年~2019年の22年分のレターを日本語でまとめられているので、それだけで価値ある一冊になっていると思います。
本日のニュースレターでは、とくに私の心に刺さった印象的なベゾスの言葉をピックアップ。
ハイライト(Kindleでいう線を引く機能)しまくりの一冊になったのですが、その中でも特に脳内スパークが走ったところをご紹介していきます。
私の感想はオマケ程度に、引用部分を読んでいただければと思います。
それでは、どうぞ。
迅速な意思決定とコミットメントを促すルール
アマゾンの経営陣は素早い意思決定を鉄則にしています。ビジネスはスピードが命。それに意思決定が素早い職場は、楽しいのです。私たちにも正解がすべてわかっているわけではありませんが、意思決定のコツをここに紹介しておきましょう。
一つ目は、硬直的な意思決定のプロセスは厳禁ということです。多くの決定は取り消せますし、もとに戻すことが可能です。こうした意思決定は簡単なプロセスでいいのです。もし間違ったとしても、どうということはありません。昨年の手紙にこのことは詳しく書きました。
二つ目は、たいていの意思決定は、ほしいと思う情報の70パーセント程度しか手に入らない時点で下さなければならないということです。90パーセントの情報が手に入るまで待っていたら、だいたい遅いのです。どちらにしろ間違った判断については、早く気づいて正せるようにしておかなければなりません。軌道修正が得意なら、間違った判断をしても浅い傷ですむかもしれませんが、判断が遅れた場合は確実に大きな代償を払うことになります。
三つ目は、「反対してもコミットする」を合言葉にすることです。そうすれば、たくさんの時間を節約できます。みんなが賛成してくれなくても、自分の提案に自信があれば、こう言えばいいのです。「みんな、反対意見があるのはわかるけど、ここは僕に賭けてくれませんか?反対でもコミットしてもらえませんか?」。話がここまで来ているときは、おそらく正解は誰にもわからなくなっているはずなので、みんなもすぐに賛成してくれるでしょう。
このあいだ、アマゾン・スタジオのあるオリジナルコンテンツの制作を許可しました。私は自分の見方をチームに伝えました。中身が十分に面白いか疑問だし制作が複雑だ、契約条件もあまりよくない、ほかにもっといい機会があるのではないかと意見したのです。チームは私の意見と正反対で、制作を望んでいました。私はすぐに返信しました。「反対するがコミットするよ。史上最高に人気のあるコンテンツになるといいね」と。
→「『反対してもコミットする』を合言葉にする」を文化にするのは目から鱗の発見でした。(プロフェッショナルな職場で働かれている方にとっては当たり前なのでしょうか.....?笑)
私の経験上、反対よりも集団からの合意を優先するケースが多く、結果的に時間だけではなく、プロジェクトへの熱量も冷め、「合意は得られたもののコミットメントなし」のような仕事をたくさん目にしてきました。
私の肌感覚としても、スピード(時間の節約)と熱量がもたらす仕事へのコミットメントは正比例です。そのためには、一部反対意見がある中でスタートする必要があり、そのためのルールとして「反対してもコミットする」が文化になっているチーム、企業は強いのだなと改めて感じた次第です。
関係者が増えるチームほど「反対してもコミットする」を明文化する効果は高そうに感じます。
そのチャレンジは片道切符か?往復切符か?
意思決定には影響が深刻で取り返しのつかないもの、またはあとでもとに戻すのがかなり難しいものがあります。そうした片道切符の決定は、順を踏んで注意深くゆっくりと、さまざまなことを考慮し検討したうえで行わなければなりません。いったん決定を下して扉を開けてからがっかりしても、もとには戻れないのです。この手の意思決定を「タイプ1」と呼ぶことにしましょう。
一方で、ほとんどの意思決定は変えられますし、もとに戻すこともできます。往復切符があるのです。この手の「タイプ2」の決定については、それが間違っていたと気づいたら、そこに留まる必要はありません。扉をもう一度開いて、来た道を戻ればいいだけです。タイプ2の決定は、判断力のある個人や少人数のチームが素早く下せますし、そうすべきです。
組織が大きくなると、後戻りできないタイプ1の意思決定のプロセスを、タイプ2にも当てはめてしまいがちになるようです。すると、動きが遅くなり、むやみにリスクを回避してしまい、実験が十分にできず、その結果、発明が減ってしまいます。そんな傾向に陥らないための方法を考えなければなりません。
→これもメチャ大事な考え方ですね。
「これやってうまくいくと思いますか?」系の悩み・逡巡・質問は、失うものがちょっとの時間とお金であればやってみた方がいい。(※自戒を込めて書いています)
STEP1:
往復切符が用意されたトライなら、まずは実験をしてみる。
STEP2:
その実験結果を受けて次を考える(ダメなら戻る)
この2ステップの回数で、得られるものも大きく変わります。
STEP0で止まっていることが一番ダメで、うまく悩んでいるつもりでも実際には貴重な時間を失っているだけ。時間こそ命だと肝に銘じたいですね。
会社の成長(規模)と失敗の規模はイコール
会社が成長するにつれ、すべてを拡大させていかなければなりません。失敗する実験の規模もまた、大きくなるのは必然です。失敗の規模が大きくならないとしたら、企業や社会を動かすほどの大きなものを生み出していないということです。アマゾンは、いまの企業規模にふさわしい大規模な実験を行っていくつもりですし、時には数十億ドル規模の損失を被ることもあるでしょう。
もちろん、最初から大失敗してもいいと思って実験をすることはありません。有望な賭けを行うための努力は惜しみません。ですが、有望な賭けでもすべてに勝てるわけではありません。この手の大きなリスクテイクは、私たちが大企業としてお客様と社会に提供できるサービスの一部です。株主のみなさまにお伝えしたいのは、その中のひとつの賭けに大勝ちすれば、数多くの失敗のもとが取れて、十分にお釣りがくるということです。
→これもグサグサ心に刺さります。。。
企業規模が大きくなるにつれ、世間体やレピュテーションを気にして、「失敗の規模はできるだけ小さく.....」と考える会社も多いのではないでしょうか?
ただベゾスが言うように、普通は会社が大きくなるほど投下資本は大きくなるので、失敗の規模が大きくならないとおかしいわけで、そこにビビってるのは良くないなと。
社内、社外(株主)に向けて、「大きなリスクテイクのうち一発でも当たれば元が取れる」と失敗に対する期待値コントロールができているのが、ただただ素晴らしいです。
余談:ベゾスが、新規事業のことを実験と呼ぶのが面白いですね。